狼くん、ふれるなキケン!
「勘違いもはなはだしいですよ!! 狼くんは、昔からとっても優しいんですっ、好き好んでひとを傷つけるようなことはしませんっ!! なのにそんなのってひどい────」
悲しくて、せり上がるまま捲し立てたあと。
クラス中の視線を集めていることにはっとして、感情的になりすぎたと反省する。
慌てて椅子に座り直した。
……うう、やってしまった……。
注目を集めるような挙動をとってしまったことに、今さら恥ずかしさと色々でいたたまれなくなっていると。
「ふは、近原さんってもっと大人しー感じの子かと思ってたんだけどな」
向かいで道枝さんが楽しそうに笑っている。
よかった、引かれてなかった……。
「う、今のは不可抗力だったんです……」
しょぼんと肩を落とす。
どうしたって、『狼くん』に私は弱いの。
「ふふ、不可抗力って。まあ、おかげでよーくわかったけどね」
「……?」
「要するに、藤川くんの諸々のウワサは、ぜーんぶ根も葉もないツクリモノってことなんでしょ?」