狼くん、ふれるなキケン!
「誘拐……じゃ、ないんですよね?」
「ふっ、まだそれ言う?」
「だって……!」
面白いものでも見るように笑った狼くんは、少し表情をゆるめる。
そして、何でもない世間話をするかのように口を開いた。
「……目ぇつけられただけ。人気のないところ歩いてたら、ガツッと一発入れられて、まー抵抗したけど集団相手じゃさすがに無傷は無理」
ガラ悪い奴、夕方になるとうじゃうじゃ湧いてくるんだよな、って狼くんは忌々しそうに呟いた。
うわさには聞いたことある、あたりが暗くなった頃合いを見計らって、いわゆる “不良” っていうのは喧嘩をしたり、バイクに乗って暴走したり……この目で見たことはなかったから都市伝説のようなものだと思っていたのだけれど。
「絡まれたってことですか?」
「……そういうこと」
「なにそれっ! じゃあ、その怪我はその人たちに殴られてってことですよね……!? そんなのっ」
むくむく膨らんでいく、怒りの感情に任せてがばっと立ち上がる。
なにそれ、そんなの、そんなの。
「ゆるせません!! サイテーです!! ありえない……っ!」