狼くん、ふれるなキケン!
勢いまかせにぐるんっと体の向きを変えると、珍しく慌てたような狼くんの声が追いかけてきた。
「待て、何してんの」
「殴りこみに行きます……!」
「は? ちょっ、」
「このまま狼くんが傷つけられっぱなしなんて、そんなのおかしいじゃないですか……っ」
「落ちつけ」
ぐい、と制服のすそを引っ張って引き留められる。
狼くんは何でもないって顔をしている、けれど、私は。
「落ちついてなんてられません!! 一方的に、向こうからなんて悪質です……! わかりますもん、狼くんが手を出さないことにつけこんだんだって!」
「……断言するんだ」
「だって、狼くんは、ひとを傷つけるようなことはしません」
乱暴したり、しない。
この怪我の原因が向こうからふっかけられたものだということも……“抵抗した” とはいえ、狼くんが相手にさほどの怪我も負わせていないだろうことも、確信している。
知っている、だから、私は狼くんのそばにいたいと思うの。
昔も、それから……ここに帰ってきたのも。
「俺、ひながここに来てから優しくした覚え、ないけど」
「それは……そうですけど」
「だろ」
「反抗期なのかなって」
「あ?」