狼くん、ふれるなキケン!
ふざけんなよって感じのトーンの声が落ちてきた。
「でも、じっさい、そうですよね?」
正当防衛でゆるされるかもしれなくても、狼くんはたぶん、必要最低限の受け身しかとらなかったはずだ。
だから、こんなにひどい傷が……。
「やっぱり見過ごせません……!」
居てもたってもいられない。
玄関の扉から飛びだしていこうとする私に、狼くんは呆れたような────でも、ちょっとやさしい顔をして息をつく。
それと同時に、足を伸ばして私の行く手を阻んだ。
「いーよ、べつに」
「よくないっ、ケイサツにでも連絡してもっとちゃんと……っ」
「いいから。慣れてるんだよ、あーいうの。元からこういう顔だし威嚇してると思われんの、半分くらい俺のせい」
「狼くんはなにも悪くないですっ」
「うん。……それで十分」
だから、と狼くんはそっと私の指先にふれた。
いつもはふれるな、ってとがめるくせに。
狼くんの方から一線越えたその感触は、ぴりっと電流のように体を伝っていく。
「ひなは、ここにいて」
「え……」
「ほら、手当てするんだろ」