狼くん、ふれるなキケン!
「近原さん、こっちこっち」
先に奥のほうに進んでいた道枝さんが、手招きをする。
あわてて小走りでそちらに向かった。
「じゃー、あとは女の子同士積もる話もあるだろーし、ごゆっくり」
「え」
「おれは上で大人しくしとくよ」
それだけ言い残して、まやくんは長い階段をとんとんと上がっていってしまう。
「あの……、まやくん行っちゃった……」
「いーのいーの、真矢なんか放っておいて」
「いいんですか?」
「いいんだよ、それに近原さんとお話がしたかったのは私の方だしね」
道枝さんについていくと、案内されたのは、ソファのある一室だった。リビングなのか、応接間なのかはわからない。
ソファに座ると、足もとにはふかふかのラグが広げてあって、目の前にはローテーブル。
「近原さんは、コーヒーか紅茶、どっちがいいかな」
「えと、じゃあ……紅茶でお願いします」
「りょーかい」
トポトポとお湯を注ぐ音がきこえてきた。
あれよあれよという間に、丁重におもてなしを受けちゃっている。
落ちつかない……とそわそわしていると道枝さんが戻ってきた。