狼くん、ふれるなキケン!
今日も今日とて、相変わらずのくせっ毛を、ヘアアイロンで必死に整えていると、狼くんがきゅうに。
「ひな、スマホどこ」
「私の、ですか……?」
「そう」
「そこに置いてあります、よ……?」
首を傾げると、狼くんがそれを私に手渡して。
「開けて、QR出して」
「きゅーあーる……」
「LIMEの」
言われるがままに操作すると、私のスマホの画面を狼くんが自分の端末をつかって読みとった。
ええ、何を……? と戸惑っていると。
「帰り遅くなるなら連絡入れろ」
「……え」
「わかった?」
「 これも、“おやくそく” ですか……?」
「そう」
狼くんと同居するために決めてきたおやくそく。
だけど、狼くんから提案されたもので、純粋にうれしいものははじめてだった。
狼くんの連絡先が登録されたスマホをぎゅっと両手で握りしめる。ずっと欲しかった、狼くんとつながるひとつの手段。
「ぜったい、“おやくそく” 守りますね……っ!」
昨日のことといい。
狼くんにとって、“帰りが遅いと心配する” くらいの存在にはなれてるんだって思えて、うれしくて。
ゆるむ頬を隠そうともせず、画面にうつしだされた狼くんの名前をそっと指先でなぞる。
そんな私を、狼くんがそのときどんな目で見ていたのかなんて、私は知る由もなかったの。