狼くん、ふれるなキケン!





「ひどい有様」

「おっしゃる通りです……」



珍しく、一足先に家に帰っていた狼くん。

帰ってきた私の姿を見るなり顔をしかめている。



「なんでそうなった?」

「じつは、傘を忘れて……」

「ただのバカかよ」



そう言っているうちにも、ぽたり、と毛先から滴がしたたり落ちた。


結局、走って帰ってもさして意味はなくて、頭のてっぺんからつま先まで、見事なまでにぐっしょり濡れてしまったの。



今でも外では激しく雨が降り続いている。

窓をたたきつけるような雨音がうるさく響いていた。




「わっ!?」




きゅうに、何かがバサッと頭の上にかぶせられてびっくりした。

見れば、大きなバスタオル。

狼くんが取ってきてくれたみたい。




「ありがとう……っ」



まるでプールに入ったあとみたいに濡れそぼった髪の毛を、タオルで包みこんでしぼった。

濡れたシャツが肌にぺったりとくっついていて、ちょっと気持ちわるい……それに。




「っ、くしゅっ」




肌寒い。

雨で体温が奪われてしまったみたい、悪寒が走ってぶるっと身震いした。



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