狼くん、ふれるなキケン!
◇
「ひどい有様」
「おっしゃる通りです……」
珍しく、一足先に家に帰っていた狼くん。
帰ってきた私の姿を見るなり顔をしかめている。
「なんでそうなった?」
「じつは、傘を忘れて……」
「ただのバカかよ」
そう言っているうちにも、ぽたり、と毛先から滴がしたたり落ちた。
結局、走って帰ってもさして意味はなくて、頭のてっぺんからつま先まで、見事なまでにぐっしょり濡れてしまったの。
今でも外では激しく雨が降り続いている。
窓をたたきつけるような雨音がうるさく響いていた。
「わっ!?」
きゅうに、何かがバサッと頭の上にかぶせられてびっくりした。
見れば、大きなバスタオル。
狼くんが取ってきてくれたみたい。
「ありがとう……っ」
まるでプールに入ったあとみたいに濡れそぼった髪の毛を、タオルで包みこんでしぼった。
濡れたシャツが肌にぺったりとくっついていて、ちょっと気持ちわるい……それに。
「っ、くしゅっ」
肌寒い。
雨で体温が奪われてしまったみたい、悪寒が走ってぶるっと身震いした。