狼くん、ふれるなキケン!
「あ、あの、狼くん」
「なんだよ」
脱衣所に入ったはいいものの……。
あることに気づいて、ひょっこり扉から頭を出す。
「私、着替えが……なくて」
「着替え?」
「ぜんぶまとめて洗濯に出しちゃってて、雨でかわいてなくて……っ。なので、何かその……着るものを」
貸してください、って言う前にぽんぽん飛んできた。
投げよこしてくれたのは、狼くんがいつも着ているTシャツと、部屋着のズボン。
「あ、ありがとうございますっ」
「嗅ぐなよ」
「ひぇっ、見ないでください……っ!」
「見てねーし」
見てないのにバレてしまったの?
エスパー……というか、行動が完全に読まれている。
すん、と吸った空気は、柔軟剤にまじってたしかに狼くんの匂いがする。私のも同じ洗剤で洗っているはずなのに、やっぱりちがう、不思議。
借りた狼くんの服はとりあえず畳んで脱衣所へ置いておく。
それから、雨に濡れた制服を脱ぎ落として。
「それじゃあ、お先にお風呂失礼しますねっ」
「……はいはい」
閉ざした扉の向こうから、狼くんの呆れた返事が聞こえてきた。