狼くん、ふれるなキケン!
「ごっ、ごめんなさい……!今すぐどきます……っ」
慌てて狼くんのお腹のあたりから降りようと思ったのに。
「なっ、狼くん……?」
なぜか、腰のあたりにぐっと腕をまわされて、動けない。
これじゃあ降りようにも降りれなくて。
「お、重いですよね……?」
「重い」
「だったら……っ」
「……まだだめ」
だめって……なに、なんでそんなこと言うの?
明かりのない暗がりのなか、狼くんの言動ひとつひとつに翻弄される。狼くんの表情が見えないから余計に。
ふいに狼くんが腕に力をこめる。
引き寄せられて、ぎゅっと腕のなかに閉じこめられた。
「な……っ、あの、狼くん、大丈夫ですかっ?」
「全然大丈夫じゃない」
「ですよねっ? あ、頭でも打ちましたか……っ?」
「……そういうことにしとけば」
会話、噛み合っているようでまったく噛み合っていない。
でも狼くんは結局離す気はないらしい、ぎゅうっとどういうわけか抱きしめられたまま。