狼くん、ふれるなキケン!
「……うるさいんだけど」
「えっ」
今、なにも喋ってないのに……!
狼くん、幻聴でも聞いたのかもしれない……なんてちがう意味でびくびくしていると。
「ひなの……心臓、うるさい」
「しん……ぞう……?」
「……なんでこんなドクドク動いてんの」
言われた意味を理解して、かあっと顔が赤くなった。
うるさいって、心臓の音のこと……っ?
今、胸のところで狼くんとくっついてるから。
鼓動がぜんぶ、伝わっているのだと気づいた。
「そ、れは……っ」
破裂しそうなくらいのドキドキも私にとっては、あたりまえのこと。
何も変じゃない。
だって、好きなひととこんな風にくっついていたら、誰だってこうなる……っ。
「……雷、こわかった?」
「へ」
なだめるみたいに言われて、一瞬戸惑う。
そっか、狼くんは私が狼くんのことを大好きだって知らないから……このドキドキを怖かったから、だと思っているんだ。
「雷というより、停電のほうが……怪奇現象かと思って」
一瞬、怖くなったのは事実。
だけど、そんなのすぐに忘れてしまった。
狼くんが、近くにいるから────。