狼くん、ふれるなキケン!


「もう、こわくない?」



こくっと頷いた。

だって。




「だって────」




狼くんが好きだから。
好きなの、狼くんのことが。



頭がくらくらするほど近い距離。

何も考えられなくて、このまま、好きだって言ってしまおうかと思った。



どんな顔をするかが知りたいの。

狼くん、私が狼くんを好きって言ったらどんな反応をするのか見てみたいと思った……けれど。




「え……っ?」




思わず声が漏れた。


だって。




ドキドキしてるのは、うるさいくらい心臓が鳴っているのは、私ばっかりだと思ってた。


ぜったいそうだと思ってた、のに、くっついた胸のところからたしかに感じるはやい脈拍は、私ひとり分じゃない。


意識してみると、私のほかにもうひとつ、すごくはやく脈打つリズムが聞こえてくる。

これって……っ。




「っ、狼くん」





たしかめようと思った。


“ どうして狼くんの心臓は、そんなにはやく動いているの” 。





< 257 / 352 >

この作品をシェア

pagetop