狼くん、ふれるなキケン!


私と同じ理由ならいいのに……、って。

そう思いながら口を開いて、でも、そのタイミングで。



「……!」



ふっと明かりが戻ってくる。
どうやら一時的な停電だったみたい。


タイミングが良かったのか、はたまた悪かったのか、明るさを取り戻したリビングでは、狼くんに真相を問いただすどころじゃなくなる。



────というのも。





「ひゃ……っ!」




忘れていた、着替えの途中で脱衣所から飛びだしてきたこと。途中……というか、衣服はまったく身につけていない。



つまり、ハダカ……!


身にまとっているものは、たったバスタオル一枚。それが今、狼くんと私の間にはさまっている唯一の壁で。





「おおおっ、お見苦しいものを……っ!」

「……っ、最悪」




がつんとショックを受ける。


よっぽど見たくなかったらしい、狼くんはふいと顔を背けてしまった。……なぜか、その耳は、赤い。



そして、なぜか、回された腕は離れない。

これじゃあ着替えようにも着替えられない……っ、とおろおろしていると。




「……そこまで無防備なの、誰にでも一緒?」

「え」

「……やっぱ、何でもない」




『やっぱ、何でもない』って、もう狼くんの口から何回も聞いているような気がする。

ずっと、その奥にある本心は見せてくれない。



私は、私はそんなに……。





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