狼くん、ふれるなキケン!



「わたしじゃ……、だめですか?」




ぽろっと弱々しい声がこぼれ落ちる。
なにがだめなんだろう、ううん、なにもかもだめなのかもしれない。


さわっても見てもくれないのは……。




「か、体もだめなんですか」

「は?」

「……私みたいな貧相な体はおきらいですか……っ?」




なけなしの勇気をふりしぼって聞いた、のに。
狼くんは目を見開いた。




「自分が何言ってるかわかってんの」

「わ、わかってます……っ」





チッ、と久しぶりに舌打ちの音を聞いた。
大きくため息をついたあと、とがめるように。





「誘ってるって解釈するけど」

「……っ」

「……なに、襲われたいの?」




狼くんが背けていた顔をこっちに向ける。
ゆらり、とその瞳が扇情的に揺れた。


思わず息をのむ。



返答しだいでは頭からがぶりと食べられてしまいそうな────そんな獰猛な気配を感じて。じりじりと焦げつきそうな熱視線、覚悟をきめて口を開こうとして────




「……っ、へっくしゅ!」




響く、まぬけなくしゃみの音。
出どころはもちろん、私、だ。

張りつめていた空気が一気にほどけていく。





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