狼くん、ふれるなキケン!


「……着替えてきたら」



心なしか突き放すようにうながされて。



「ごっ、ごめんなさい……っ!」




慌てて脱衣所に駆けこんだ。
は……っ、恥ずかしい……!



バスタオル一枚しかまとっていなかったことも、なにかものすごく大胆なことを口走ってしまったことも、ぜんぶ、なかったことにしたい……っ!




「ううう……」




今さら後悔しながら、気恥ずかしさをごまかすために、狼くんが貸してくれたTシャツをかぶる。


わっ、おっきい……。
私が着るとちょうどワンピースみたい。



たしかに狼くん、身長大きくなったなあと思ってはいたけれど、大きいのは丈だけじゃない。横幅にもしっかり布地があまっていて、体格の差をこんなところで思い知った。


案の定、ズボンの方はずり落ちてしまって身につけることすらできなくて。





「あ、あの着替え終わりました……っ」

「……」

「ズボンはちょっと、私には大きすぎたので……」




リビングに出ていくと、狼くんが私の頭のてっぺんからつま先まで、つうっと視線でたどって。


ひとつ、ため息。
そして、目も合わせてくれないまま。





「……風呂行ってくる」





すたすたと背中を向けて入れ替わりに出ていってしまった。




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