狼くん、ふれるなキケン!
「とにかく、学校……っ」
学校、行かなきゃ。
制服に着替えようと部屋に戻ろうと踵を返す。
大した動きをしていていないのに、なぜか足取りが重くて。
階段の真ん中あたり、油断した隙に、ふらっと体が傾ぐ。
うまくはたらかない思考回路でも、さすがに「落ちる……っ」と危機を察知した瞬間。
「ひな」
「……っ、狼、くん?」
どこから現れたのか、とっさに体を支えてくれた狼くん。
その様子を何も考えられずにぼーっと見つめていると、狼くんのひやりとした大きな手のひらが私の額にふれた。
ふれた温度がつめたくて心地よくて目を細めると。
「あつい」
「え……」
「熱あるだろ、これ」
ねつ……。
風邪ひいてるってこと……?
「かぜ、ひいてないもん……っ、ごほっ、ん゛っ」
言ってるそばから、咳をして涙目になる私に狼くんはあきれたように息をついた。それで、有無を言わさずに私のことをどこかへ連行する。
あれよあれよという間に、ベッドの上に寝かされていた。
ピピッ、と電子音がして、さっき強引に挟んできた体温計を取り上げた狼くん。
「38度」
「さんじゅう、はち……」