狼くん、ふれるなキケン!





次に目が覚めたのはお昼を少し過ぎた頃だった。



「狼、くん……?」



ぼやけた視界のなかに、狼くんの背中を見つける。

呼びかけると狼くんがベッドの近くまで寄ってきてくれた。



「体調は」

「……のどが、いがぐり」

「何だそれ」



冷めた目を向けながらも、つめたい水の入ったコップを渡してくれる。ごく、と流しこむとひやりとした冷たさがのどの不快感を少しやわらげてくれた。



朝よりも頭がちゃんとはたらいている気がする。

少しクリアになった思考回路で、ふと気づいたこと。




「あ、あの……っ」

「なに」

「狼くん、学校は……?」

「サボった」




さ、さぼ……。
思わず絶句する。




「俺がいない間に死なれたら困るし」




死ぬほど大した風邪なんかじゃない、そんなの狼くんだってわかってるはずだ。

だけど、ここにいてくれるってことは……少なからず、心配してくれて、なんだよね。



いつもなら、サボり、なんてぜったいだめって怒ってる。だめですよっ、ちゃんと行かなきゃだめって。



だけど……今日は、だめかもしれない。



嬉しい、って思ってしまう。

狼くんがそばにいてほしいし、そばにいてくれる狼くんに甘えたくなってしまう、悪い子なの。



狼くんのことをとがめるなんてできなかった。





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