狼くん、ふれるなキケン!


「なにか食べれそう?」

「うん……」



正直にいうと、お腹はあんまりすいてない。

わからない、朝から何も食べてないから、すいてないとおかしいのだけれど……食欲がなくて。



ごまかしたつもりだったのだけれど、狼くんはすぐに食欲がないってわかったのか。




「とりあえず、口に入れられるものだけでも食え」

「……うん」

「りんごなら食える?」




固形物はちょっと、くるしいかもしれない……と思ったのだけれど、狼くんが見せてくれたお皿にはすりおろしたりんごが入っていた。


寝ている間に、準備してくれてたの……?





「食べる……っ」




優しさがじんわりと染み渡っていく、いちばんの薬かもしれない。風邪をひくと、無性に心細くなるものだけれど、それが一瞬で溶けてなくなっていく。


はい、とお皿とスプーンを手渡されて。

じっとにらめっこする……うちに、甘えたな心が顔を出した。




「……狼くん」

「うん?」

「食べさせて、ほし……」





< 265 / 352 >

この作品をシェア

pagetop