狼くん、ふれるなキケン!


熱に浮かされているから言えたんだと思う。
ふつうなら言えない、言わない……こんなこと。

甘えた発言に、狼くんがぴくりと眉を上げた。




「……一人で食えない?」




こくん、と頷いた。


嘘、ほんとうはたぶん一人でも食べられる……けれど、そう言ったら狼くんはここから出ていってしまうでしょ?



じっと狼くんの目を見つめる。

しばらくして、はー……と狼くんが大きく息をついた。




あきれられてしまったかな。
……もう、それも今さらなのかな。


しょぼんとすこし落ちこんだ気持ちになっていると。




「……ほら」

「え……」

「さっさと食え」




つめたい金属が、唇にふれて驚いた。

見れば、狼くんがすりおろしりんごをスプーンですくって、差し出してくれている。



食べさせて、くれるの……?

わがままを受けとめてくれたことに、ちょっとの罪悪感と、それから言いようもない嬉しさが心を支配する。



口をそっとひらくと、狼くんが器用にりんごを押しこんでくれた。




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