狼くん、ふれるなキケン!



「おいし?」

「おいしい、よ」




そう、と頷いて狼くんは目を細めた。



甘酸っぱい果汁が、ほてった舌に染みて潤していく。

きゅうっと胸の奥の方まで甘くなったのは、狼くんがつくって、食べさせてくれたからだと思う、きっと。




りんごを食べ終えると、薬と水を手渡された。


ごくり、とそれを飲みこむうちに、いつの間にか貼ってくれていたらしくぬるくなった冷えピタを狼くんが新しいものに替えてくれた。



そのひんやりとした冷感にふるっと肩を震わせると、狼くんはすっと目を逸らして立ちあがる。




「……ちゃんと寝ろよ」




それだけ言い残して背中を向けてしまう。

どんどん離れていく後ろ姿、扉に手をかける直前。




「っ、狼くん……っ」




とっさに呼び止めてしまった。
だって、まだ。

まだ……。




「行かないで……っ」




思ったよりも切実な声がこぼれた。




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