狼くん、ふれるなキケン!
「そばにいて、ほし……」
どうして、なんだろう。
狼くんの前だと、みっともなくなってしまう。
安心するの、ふわふわして、心がゆるむの。
逆にいうと、狼くんだけだと思う。
私のこんな甘えたでどうしようもないところを引きずりだして、みっともなくしてしまえるのは。
「……ほんと、ずるいんだよ」
狼くんがちいさく、何か呟いたような気がした。
そのまま部屋を出ていってしまうかもしれない、と思ったけれど、狼くんは足を止めて。
それから、戻ってきてくれる。
仏頂面でコワモテがさらにこわくなってるけれど……それでも、ベッドのそばに戻ってきてくれた。
「狼くんは、結局……いつも、優しい、です」
「そんなこと言うの、ひなだけ」
ふるふると首を横に振る。
ぜったいそんなことない、いつもあんなにいやそうにしてる私にだってこんなに優しいんだよ。
だったら他の子には……もっと。
「……狼くんがやさしいって、みんなに知ってほしい、の」
ずっと、そう思ってた。
昔も、それから再会してから今も、ずっと。
狼くんがこんなに素敵でやさしいんだって、みんなに知ってほしい……それが私の望んだことだったはずなのに。