狼くん、ふれるなキケン!
※オオカミは肉食獣
- side 狼 -
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すーすー、と規則正しい寝息が聞こえてくる。
安心しきったような寝顔が、恨めしい。
「はー……」
堪えていたぜんぶ、吐息に変えて吐き出した。
思わず項垂れる。
こいつは、ほんとうに、ばかだ。
傘を持たずにずぶ濡れになって帰ってくるし、風呂からタオル一枚で飛び出してくるし、挙句の果てに風邪をひいてる、ただのばか。
────じゃあ、そのばかにいちいち煽られてる俺は何なんだって話。
「理性、飛ぶ……」
これ以上は、まじで、やばい。
ここ最近、そう思ってばかりだ。
一歩間違えば、タガなんて簡単に外れてしまう。いつ本能が飛び出してきてもおかしくない。
それは、今だって同じ。
「……っ」
ぎゅう、とひなの小さくてやわらかい手のひらが、俺の手を握る。「離さない」とでも言うように。
熱があるから、そのせいなんだろうけれど。
苦しげにこぼす、あつい吐息も、桜色に染まった頬も。
この状況で、こんな姿のひなを見て、手を出したくならない男なんているんだろうか。
よこしまな気持ちを少しも抱かずにそばについてやれる男なんて……きっといない。