狼くん、ふれるなキケン!
『ひなのこと、幼なじみだなんて思ったことない』
あのとき、ああ言ったのは。
ほんとうに思えたことがないからだ、ひなのこと “ただの幼なじみ” だなんて、思えるわけがない。
幼なじみであるよりも前に、ひとりの女として、ずっと、頭がおかしくなりそうなほど────ひなのことが好きだ。
ちゃんと自覚している。
自覚せざるを得なかった。
幼い頃の初恋の女の子、遠くに引っ越したっきり、もう会うこともなくていつか初恋の記憶なんて忘れてしまえると思っていた頃もあったけれど、そんなの、嘘だった。
自覚したのは、ここに戻ってきたひなを見つけたあの瞬間。
『────狼、くん?』
その声を聞いたとき、その姿をとらえたとき。
“ 忘れてしまえる ” なんてただの強がりだったと知った、心臓があつくなる、体のなかをうずまくのは激流。
────ずっと、会いたかった。
こんな衝動が自分のなかに眠っていたなんて、知らなかった。
『ろうくん、ピーマン食べれないの?』
『じゃあ、ひなが食べてあげる!』
『このまま狼くんが傷つけられっぱなしなんて、そんなのおかしいじゃないですか……っ』
『狼くんは、ひとを傷つけるようなことはしません』
何も変わっていない。
いつだって、そのまっすぐな眼差しを俺に向けて、手を伸ばして微笑みかけてくれる。
恋心を思い出す、どころじゃない。
一緒にいればいるほど、どんどん溺れていくのが自分でもわかる。
好きで、仕方なくて、しんどい。