狼くん、ふれるなキケン!
ATTENTION 9: お酒はハタチになってから!
- side ひな -
◇
翌日。
朝起きると、薬がきいたのか、狼くんの看病がきいたのか、うだるくらいの熱はすっかりひいていた。
だけど、病みあがりだからということで、大事をとって今日も学校は休むことに。
それで、家で大人しく、学校に行った狼くんの帰りを待っていたのだけれど────。
「あの、どちらさま、ですか……っ?」
お昼を少し過ぎたころ。
インターホンが鳴ることもなく、ガチャリ、ととつぜん玄関の鍵が開いたのだ。
これは、一大事件。
あわてて玄関のところまで駆けていくと、侵入者、おひとりさま。
高身長ですらっとした男の人、さらっとした茶髪の爽やかで優しそうな面立ち。雰囲気は、大学生……っぽい。
焦げ茶の瞳とぱちりと目が合って、数秒。
みるみるうちに、彼の瞳が丸くひらいていく。
警戒心をぴりぴりとまとう私に、彼は。
「……もしかして、ひな?」
「へっ?」
わ、私の名前を知って……。
とすると、このひとは、まさか。
「忘れた? 俺のこと」
「えっと」
「────俺だよ俺、藤川桜」
耳なじみのある名前に、記憶をさかのぼる。
コンマ数秒、のち。
「えええ……っ?!」
驚きの絶叫が響きわたった。