狼くん、ふれるなキケン!





「狼くん、なんで教えてくれなかったんですかっ!?」



夕刻、狼くんが帰ってくるなりまくし立てた私。

狼くんは怪訝な顔をして、リビングを覗きこんだ。

そこには。




「……うわ、桜くん、もう帰ってたわけ」

「つれないなー、久しぶりに会う兄貴だっていうのにさ」




狼くんと桜くん。


血の繋がった実の兄弟なのに、こうも似てないと変な感じだな、と思う。それは今にはじまったことじゃなく、昔からだけど────じゃなくて!




「狼くんは知ってたんですよねっ? 桜くんが帰ってくるって……!」




さっき、桜くんに聞いた。
狼にはちゃんと連絡した、って……。




「何も聞かされてなかったせいで、ほんとに驚いたんですからねっ?」




ほんとうにびっくりした。

アメリカに留学しているはずの桜くんが急に目の前にあらわれるし、それに、私は桜くんとだって10年間会ってなかったわけだし……。


それはもう、大混乱だったわけで。




「別に言う必要ないし」

「心づもりってものがあるんですっ!」

「……まさか、ほんとに帰ってくるとも思ってなかった」




お化けでも見るような表情を桜くんに向ける。

そんな狼くんに、桜くんは面白がるようにけらけら笑っている。




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