狼くん、ふれるなキケン!
「てか、ほんとにひなここに住んでるんだな」
母さんから聞いてはいたけど、と桜くん。
「で、その母さんは今、父さんのとこなんだって?」
「そうなんです」
「じゃあ、狼とひなでふたり暮らしってわけだ」
ふーん、と興味深そうに狼くんとわたしを見比べた桜くんは、にやにやと意味深な笑みを浮かべた。
その笑みの理由が気になりつつも。
「桜くんは、帰ってきて大丈夫だったんですか?」
「もう留学は一段落ついたからな。本当はもう少し向こうにいてもよかったんだけど、色々あって帰国することになって……なに、帰ってきてほしくなかった?」
また、含み笑い。
「そんなこと言ってないです……!」
桜くんは、昔とあまり変わっていないな。
基本は頼れる三つ年上のお兄さん、なんだけど、ときおりイジワルなの。
ううん、イジワル……というよりは、イタズラ好きと言った方が正しいかもしれない。
「でも、今日帰ってきて正解だったよ」
「正解……?」
「そ。だってさー、かわいい女子コーセーになったひなとふたりきりで過ごせたし? 昼間、狼いなかったから」
これは、からかってるんだ……!