狼くん、ふれるなキケン!


「私がおねがいしたんです、学校の英語、今の単元がぜんぜんわからなくて……」



おまけに2日も休んでしまったから、本格的についていけなくなるところだった。

そんななか、突然あらわれた桜くんは、まるで救世主。




「桜くん、ほんとうにすごいんですよっ! 英語ペラペラだし、教えるのも上手だし、発音も完ペキでかっこよくて……!」


「まあ、本場仕込みだからな」



ほんとうにすごいんだということを伝えたかったのに、狼くんは面白くなさそうな顔で「……へえ」とてきとうな相槌を打つだけ。

興味なかったかな……、この話。




「そういえば、桜くんもこれからここで暮らすってことですか?」

「いや、俺はもともと大学寮に住んでるからさ。そのうちそっちに戻るつもりなんだけど、数日だけここに泊まろうかなって」



一時帰宅ってことらしい。

でも、ともかく数日の間、桜くんはここに滞在するってことで……。


じゃあ。




「桜くんは私の部屋で寝ますか?」

「……は?」




いち早く、反応したのはなぜか狼くんの方だった。

その低い声にびっくりしつつ、答える。




「だって、私の部屋、もともと桜くんの部屋ですもん」




居候させてもらっているのは、そもそも私の方なのだ。




「……その場合、ひなはどこで寝るつもり」

「……? どこって、桜くんと一緒に────」



口にした瞬間、狼くんの瞳が鋭く細まったような気がした。

身構えると同時に、ぴしゃり。



「却下」

「きゃ……」




きゃっか……?





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