狼くん、ふれるなキケン!
「へー、意外」
桜くんの興味津々な視線を背中に受けながら、狼くんはキッチンへと向かっていく。
その後ろ姿が完全に見えなくなる前に、桜くんがイタズラっぼく笑って。
「やった、これでまたひなとふたりきり」
含みのある声でそう言った。
その言葉に狼くんが一瞬足をとめて、ぴくりと体をふるわせたような気がしたけれど────気のせいだったのか、そのままキッチンへと消えていく。
今のは……。
「兄弟にしかわからないやりとり、ってことです……?」
「はは、ひなは鈍いな」
「ニブい?」
きょとん、と首を傾げると、桜くんは予想もしなかった方向から攻めこんでくる。
「ひな、狼のこと好きだろ」
「っ、えっ」
「なに驚いてんの」
「だって……!」
そんなこと、ひとことも言ってない。
これが3年の人生経験の差なのかな……と愕然としていると。
「見ればすぐわかる。ひながわかりやすいんだよ」
「うっ」
「俺がいても、ぜんぜん、狼のことしか見えてないって感じ」
その指摘があながち間違いでないことが、恥ずかしいの。
狼くんしか見えてないって、そのとおりかもしれない。
それがバレバレの筒抜けだったことが、余計に恥ずかしい……!