狼くん、ふれるなキケン!



「俺さ、昔、狼に意地悪しちゃったんだよね」

「昔……」

「ひなが、ここから引っ越していった日」



10年前ってこと……?

狼くんが6歳で、桜くんは9歳の頃。


そのくらいの歳なら、イジワルのひとつやふたつ、めずらしくもないはずだけれど……。




「子供ながらに、なかなかタチの悪い意地悪だったな、あれは」

「イジワルって、どういう」

「意地悪は意地悪」




教えてくれる気はないみたい。

そして、あまり反省しているようにも見えなかった。


面白がるように目を細めた桜くんは、イタズラっ子のように。




「それが、思ったよりも狼にきいちゃってさ。……引きずってるんだと思うよ、狼は口には出さないけど」




ある種トラウマみたいなもん、って。


桜くん、いったいどんな意地悪を仕掛けたのだろう、と気になりつつ。





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