狼くん、ふれるなキケン!
有名人っていつもこんな感じなのかなって、ひとりでひゃ〜っと心をじたばたさせる。
そんな、ざわざわする教室。
「ひなちゃんは、おれが案内するよ」
とある人の発言で突然しーん……と静まり返った。
びっくりしていると、さらに。
「ひゃ……っ!?」
まぬけな声を上げたのは、肩に腕が回ってきて、ぐいと引き寄せられたから。
「ね、いいでしょ」
ほっぺた同士がくっついちゃいそうなくらい近い距離で、動じる様子もなくにこにこと笑っている。
隣の席のミルクティー色の髪をした男の子。
さっき、『おれが案内するよ』って言って、なぜか教室を静まり返らせた張本人。
「……っ、ええと……っ」
いいでしょ、って聞かれたって。
いいも悪いも、なにもかもわかんない……!
戸惑いばかりが大きくなって、何も言えずにもごもごしていると。
「ってことで、けってーい」
男の子がにこっと笑う。
わ、わたしまだ何も言ってないのに……!
んな横暴な、と唖然と固まってしまった私は、他のクラスメイトたちが「またか」って顔をして苦笑いをしていたことには気づけなかった。