狼くん、ふれるなキケン!
◇
『あいつ、そのうちひなのこと多少傷つけると思うけど』
あまり真剣にとらえていなかった桜くんのその言葉が現実になるのは、思っていたよりもずっと、はやかった。
「あつい……」
台風のようにわが家を訪れた桜くんが、数日後、またもや台風のように去っていってすぐ、梅雨が明けた。
じめじめとした湿気が少しやわらいだかと思えば、今度はじりじりと照りつける太陽の光線が本気を出しはじめるのだから、夏ってやっかい。
焦げるような日差しに刺されながら、放課後、家に帰ってきたところなのだけど……。
とにかくあついの。
あつくて、喉がかわいた。
汗をけっこうかいてしまったせいか、体が水分を欲している。
水分、できれば、ちょっとしゅわしゅわした爽やかな飲みものがあれば……。
なんて、あつくてぐらぐらする思考回路で考えながら、冷蔵庫を開けた。
開けた瞬間、すーっとした冷気が肌をなでていくのが気持ちいい。そうとう肌がほてっているのかもしれない。