狼くん、ふれるなキケン!



「狼くんっ、おかえりなさい……っ!」

「っ、ちょ、なにいきなり」




狼くんが、ぴしりと石のように固まった。

ぎゅうっと真正面から狼くんの大きな背中に腕を回す。



落ちつく、大好き、あったかい。


前にゾンビ映画を見てしまったときもそうだったけれど、狼くんにくっつくのが好き。心地よいドキドキが安心を連れてくる。


離れがたくてぎゅっとそのまま身を預ける。




「……ひな、どうした」

「狼くんが、いないの、寂しかったの……っ」

「……今日は、ふつうに帰ってきたんだけど」




困ったように、べりっと体を引き剥がされる。
それで、私の顔を覗きこんだ狼くん。




「顔、赤い」

「ひゃ……っ」




おでこに、手の甲でふれられる。
それは、ほんの一瞬だけ。




「熱はないな」

「元気ですもんっ」

「でも変」

「変じゃない……っ」




むっと頬をふくらませる。

目についた狼くんの手のひらをぎゅっと両手で握ると、狼くんはぴくりと体をふるわせた。




< 294 / 352 >

この作品をシェア

pagetop