狼くん、ふれるなキケン!


それって、もしかしなくても、犯罪……!


今さらどうすることもできずに、この世の終わりのような顔をしていると、ぱち、と狼くんの指先が私のおでこを弾いた。



「った……!」



じんわり広がる痛み。
手のひらでおでこをさする。




「もう飲んでしまったんだから仕方ないだろ」

「はい……」

「事故なんだし」




はー……と息を吐き出した狼くん。

例の缶と私の使ったコップをちらりと目視して。




「どのくらい飲んだ?」

「えっと、はんぶん、くらい」

「気分は」



きぶん……。
ちょっと考えてから、口をひらく。



「ふわふわ……? 頭のなかがわーっとなって、なんか、こう……雲の上にいるみたいな……」

「酔ってるって言うんだよ、それ」

「……? 酔って、ないもん」

「どの口が言ってんの」

「この口だもんっ」



むっと唇をとがらせると、狼くんが「はあ?」って、完全にあきれかえった声を零した。



でも、ほんとだもん……。
はんぶんしか飲んでない、このくらいでは酔わないもん。


むしろ、楽しくて気持ちいい、未成年じゃなかったらもうちょっと飲みたいと思うくらい。



でも。




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