狼くん、ふれるなキケン!
ともかく、突然、狼くんの温もりを奪われた私は、名残惜しい、どころじゃない。
「っ、狼くん」
ぎゅうっと後ろから狼くんの背中に抱きつく。
こんな大胆なことができるって、やっぱり少しくらいは酔っているって認めたほうがいいかもしれない。
お酒のせいにでもしないと、言い訳がきかないもん。
「っ、ひな」
「……だめっ?」
「……だめとかじゃなくて、一旦離れて。まじで」
「だめじゃないなら、やだ、離れないっ」
ぎゅっとさらに力をこめると、狼くんはまるで彫刻のように固まってしまった。
焦ったような口調が、少し……少しだけ、私に動揺しているように思えて。
もっと揺さぶりたいと衝動に駆られたのが────だめだったのかもしれない。
「狼くん」
「……なに」
狼くんって、呼びかけたら高確率で返事してくれる。
そっけないけど、「なに」ってちゃんと聞いてくれる、から。
期待してしまったのも、よくなかったのかもしれない。
それでも、止まれなかった。
だって際限なく溢れてくるから。
次から次へとうまれて、ふくらんで、満ちていく。
もう心のなかだけに留めておく方法なんて、わからなかったの。
「あのね」
「……」
「あのねっ、狼くんが好きなの大好き……っ」