狼くん、ふれるなキケン!


好き、なんて伝えたら。


あきれられると思ってた。

ため息か、鼻で笑われるか、なかったことにされるか。


だけど、じっさいは。




「……っ」




私がその言葉を口にした瞬間、狼くんをまとう空気が一変した。


底冷えするような冷気、今まで感じたこともないような。



そして。





「────嘘つき」





ひどく冷淡な────凍りついた声がつらぬく。


ふわふわした感覚が一気に霧散していく。それで今まで酔いが回っていたこと、それからそれが今、一瞬にして醒めたことを知った。




“嘘つき” 。

それが、私の言ったことに対して、なら。




「嘘じゃ……っ」




嘘じゃない。


勢いに任せて口にした言葉だったとしても、そこに少しも嘘はないのに。全部、ほんとうなのに。


だけど、狼くんはそれ以上、反論する余地さえ与えてくれなかった。





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