狼くん、ふれるなキケン!
やるせない気持ちを閉じこめるように、ぎゅっと唇を噛むと。
「あーあ、何も考えてなさそーなところがひなちゃんのいいとこだったのに」
まやくんがそんなことを言ってくる。
「っ、ぜんぜん褒めてないですよね、それ」
「褒め言葉だってば」
「絶対うそです!」
前にも思ったけれど。
何も考えてなさそう、はどう考えても褒め言葉じゃない!
そして褒め言葉だとしても、あんまりうれしくない。
むすっと頬を膨らませると、まやくんが甘やかに笑って、私の頬をきゅっとつまむ。そのまま弄ぶように、むにーっと伸ばすから。
「にゃにしゅるんですか……っ」
「どう? ちょっとは調子取り戻した?」
伸ばされていた頬がぱっと解放される。
「あ……」
もしかして、今のは。
まやくんなりの励まし、だったのかもしれない。