狼くん、ふれるなキケン!


そんな風に、軽口の応酬をしているうちに、涙もひっこんでいく。そうすれば、自然に口角も上がって。



「まやくん。……ありがとうございます」

「何もしてないけどねー? まあ、でも、どーいたしまして」



うん、ちょっと元気になった。
これは、まぎれもなくまやくんのおかげだもん。


いつ見ても、宝石のようにキラキラしているまやくんの瞳を見つめてにこにこしていると。




「今度はかわいい顔してどーしたの」

「えっ」

「そんな見つめられたら、ちゅーしたくなるよね」




待って、もういつも通りのまやくんだ。

あわてて逃れようとするけれど、まやくんはそれを許してくれるほど甘くはない。



「思い出づくりに1回くらいキスしとくってのもありじゃない?」

「っ、ナシです!ぜったいナシ!」

「なんで? 減るもんじゃあるまいし」




面白がるみたく喉をくつくつ鳴らしながら、まやくんの指先が私の顎を持ちあげて。


冗談もたいがいに────と顔を背けようとしたとき。





「っ、あ、狼……くん」





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