狼くん、ふれるなキケン!





やっぱり、ちゃんと、話がしたい。

そう思って、家に帰ったあと、狼くんの帰りをひたすら待っていた。



『応援してる』



まやくんもああ言ってくれたもん。


今度は、お酒の力を借りるんじゃなくて、勢いまかせでもなくて、ちゃんと自分の言葉で。

わかってほしい、伝えたいから、狼くんに。




しばらくして、ガチャリと鍵を開ける音。




「狼くんっ!」




玄関の扉がひらいて、狼くんが帰ってきた瞬間、声を上げる。



靴を脱いですぐのところで正座をして待っていた私を、狼くんはあの冷ややかな目で見下ろした。

昨日と同じ、温度をなくした視線に、噛みつかれた鎖骨が疼く。




そのまま横をすり抜けてリビングの方へ向かおうとするから、あわてて立ち上がって狼くんの正面に回りこんだ。


両腕をいっぱいに広げて立ちふさがる。

そう、いわゆる通せんぼ。




「っ、狼くん、聞いてくださいっ」

「……」




返事がない。

それだけで勇気なんて簡単にしぼんでしまいそう。



……けれど。

ひかない、負けないもん。





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