狼くん、ふれるなキケン!
◇
やっぱり、ちゃんと、話がしたい。
そう思って、家に帰ったあと、狼くんの帰りをひたすら待っていた。
『応援してる』
まやくんもああ言ってくれたもん。
今度は、お酒の力を借りるんじゃなくて、勢いまかせでもなくて、ちゃんと自分の言葉で。
わかってほしい、伝えたいから、狼くんに。
しばらくして、ガチャリと鍵を開ける音。
「狼くんっ!」
玄関の扉がひらいて、狼くんが帰ってきた瞬間、声を上げる。
靴を脱いですぐのところで正座をして待っていた私を、狼くんはあの冷ややかな目で見下ろした。
昨日と同じ、温度をなくした視線に、噛みつかれた鎖骨が疼く。
そのまま横をすり抜けてリビングの方へ向かおうとするから、あわてて立ち上がって狼くんの正面に回りこんだ。
両腕をいっぱいに広げて立ちふさがる。
そう、いわゆる通せんぼ。
「っ、狼くん、聞いてくださいっ」
「……」
返事がない。
それだけで勇気なんて簡単にしぼんでしまいそう。
……けれど。
ひかない、負けないもん。