狼くん、ふれるなキケン!
※同居と恋のおやくそく
- side ひな -
◇
「ひなちゃん、ちょっと落ち着いた?」
「うう、はい……」
ぐすぐすと鼻をすする。
小雪ちゃんが淹れてくれたあたたかい紅茶にそっと口をつけると、心が少しずつほぐれていくような気がした。
小雪ちゃんには……それからまやくんにも、情けないところを見せてしまったな。
『実家に帰らせていただきます……っ!!』
咄嗟にあんなことを言って飛び出してきてしまったけれど、帰ることのできる実家なんて近くにはないし、だからといって狼くんのいるあの家に戻ることもできなくて。
結局、小雪ちゃんに電話をかけて泣きついて。
そうしたら『うちに来たらいいよ』って言ってくれて、まやくんが迎えにきてくれて────今に至る。
「私はひなちゃんに頼ってもらえて、うれしいよ」
どれだけ優しいの。
こんな時間に家に押しかけてきて、ふつう、迷惑なはずなのに。
おまけに狼くんとのあれやこれやの話もぜんぶ、聞いてくれた。
おかげでちょっとは冷静になれてきたかもしれない。