狼くん、ふれるなキケン!
体育座り、顔をひざにぐりぐりと押しつけていると、着信音。
場にそぐわない軽快な音楽が響きわたる、出どころは私のスマホ。
まただ。
もう何回目かな。
「出なくていいの?」
光る画面、表示された名前は、狼くんだ。
その名前を見るだけで心がちくちくする。
さっきから、狼くんは何度も電話をかけてくる。
……でも。
「……出ませんっ」
「どうして?」
「……狼くんに、合わせる顔がないんです」
どんな声で、なんて言って、狼くんと会話したらいいの。
わからない、狼くんとどうやって向き合えばいいかわからない。
それに、もうひとつ。
子どもっぽいから口にはしないけれど、いじけてるんだもん。
せっかく交換したのに、それっきり一度も使うことがなかった連絡先。こんな時にばっかり電話かけてくるなんて、ちょっと拗ねている。
困ればいいんだ、狼くんなんて。
……ちょっとくらい、私のことで頭を悩ませればいいの、焦ればいい、頭のなかを私でいっぱいにしたらいい。
狼くんだってちょっとくらいは私の気持ちをわかればいいの。