狼くん、ふれるなキケン!
「ひな?」
「……あ、えっと、ママとパパが今日こっちに来れそうって」
「ついでに、こっちの母親も今日付けで戻ってくるってさ」
狼くんの方の電話は、狼くんママだったんだ。
狼くんパパも無事に回復したということで、それはいいこと。
……なのに。
「じゃあ、今日で……狼くんとの同居も、終わり、ですね」
「なにしんみりしてんの」
「……っ」
「ふ、寂しい?」
なんでそんな意地悪言ってくるの。
だって、もう狼くんと過ごすのが当たり前になっちゃってたんだもん。寂しいに決まってる、だって少しも離れたくない……っ。
「狼くんは、寂しくないんですか」
む、と唇をとがらせると。
狼くんは清々しいまでの笑顔で。
「へーき」
「……っ、な」
「────10年も離れてたこと思えば、どうってことないし」
小指を軽く立てた狼くんが、だって、と続けた。