狼くん、ふれるなキケン!



道枝さんは、こくんと頷いた。
そして、私に向かって大まじめなトーンで。




「いい? 近原さん、真矢にはぜったい気をつけて!」

「へ……」

「迂闊にふたりきりになんて、なっちゃだめだからねっ!」




めっ、と忠告するように人差し指をぴんと立てた道枝さんに、まやくんは「まーた始まったよ」とうんざり顔。




「真矢になに言われても信じちゃだめ、口先だけなんだから。ほんっと、軽薄でチャラチャラでどうしようもない奴で!」

「ゆっきー、さすがに言いすぎじゃなーい?」

「真矢は黙ってて!」




ぴしゃりとたしなめられたまやくんは、「おお怖」と大げさに体を震わせていた。

そういえば、道枝さんのことを「ゆっきー」と呼んでいるのは、きっと下の名前から取ってるんだよね、「小雪」から。




「とにかくね、真矢は超軽薄なの、女の子なら誰でもソッコー口説いちゃうの!」





道枝さんの言葉に苦笑いを浮かべる。
まやくんには悪いけど……、道枝さんのまやくん評はあながちまちがっていないと思う。




< 41 / 352 >

この作品をシェア

pagetop