狼くん、ふれるなキケン!
道枝さんは、こくんと頷いた。
そして、私に向かって大まじめなトーンで。
「いい? 近原さん、真矢にはぜったい気をつけて!」
「へ……」
「迂闊にふたりきりになんて、なっちゃだめだからねっ!」
めっ、と忠告するように人差し指をぴんと立てた道枝さんに、まやくんは「まーた始まったよ」とうんざり顔。
「真矢になに言われても信じちゃだめ、口先だけなんだから。ほんっと、軽薄でチャラチャラでどうしようもない奴で!」
「ゆっきー、さすがに言いすぎじゃなーい?」
「真矢は黙ってて!」
ぴしゃりとたしなめられたまやくんは、「おお怖」と大げさに体を震わせていた。
そういえば、道枝さんのことを「ゆっきー」と呼んでいるのは、きっと下の名前から取ってるんだよね、「小雪」から。
「とにかくね、真矢は超軽薄なの、女の子なら誰でもソッコー口説いちゃうの!」
道枝さんの言葉に苦笑いを浮かべる。
まやくんには悪いけど……、道枝さんのまやくん評はあながちまちがっていないと思う。