狼くん、ふれるなキケン!
だけど、この学校がどうとか、桐女の校風がどうとか……正直よくわからない。
だって、そこまでちゃんと考えてなかったから。
校風なんて、私にとってはどうでもよかったんだもん。
選択肢なんてほかになかった。
私がこの学校に転入することを決めた理由なんて。
「制服がかわいくて、昔からずっと憧れてたんですっ」
「いくらなんでも、それだけ、なわけないでしょ」
たしかにここの制服、かわいいけどと付け足したまやくん。
鋭いな。
そう、決め手はもうひとつ。
ううん、ほんとうは最初から、私がねらっていたことなんて、ひとつしかないの。
だけど……。
言いあぐねていると、廊下の向こうの方にいくつか人影が現れる。もうすぐ一限がはじまるから、移動教室かな。
「っ!」
何気なく、ぼんやりと。
人影のあつまりを眺めていたのだけれど。
「ひなちゃん?」
ふと見つけたたったひとりの姿に、ぴくっと肩が揺れた。
そんな私のちいさな反応を見逃さなかったまやくんが首を傾げる。