狼くん、ふれるなキケン!
「いえっ、何でもないですっ」
あわててごまかした、けれど。
そんなことで、まやくんがごまかされてくれるはずがなかった。
私が先ほどまで見つめていた方向を、ぱっと振り返ったたまやくん。
そして。
「……藤川狼?」
ほんとうに鋭いな。
ぴたりと言い当てられてしまった。
たくさんのひとの中に紛れこんでいても、すぐに視界に飛びこんでくる。頭ひとつ抜けた高身長と、目立つグレーの髪。
きゅっと唇を結ぶ。
「あー、そういえば。ひなちゃんって、藤川狼と仲良かったっけ」
幼稚園の頃のことを思い出しているのかな。
まやくんは目を細めて呟いた。
狼くんと私とまやくん。
なんの巡りあわせか、幼稚園は年少さんの頃から年長さんになるまで、3人ずっと同じクラスだった。
そのときのことを思い出したような素振りをみせるまやくん、その表情が心なしか険しいの、たぶん気のせいじゃない。
あんまり……っていうか、そうとう相性がわるかったもんね。
狼くんとまやくん。