狼くん、ふれるなキケン!
『幼なじみ、なのに……』
思わず、ぽつりと呟いた。
“赤の他人” なんかじゃないよ。
寂しくて悲しい。
不可抗力、じわっと目頭が熱くなる。
せめて涙に変わらないようにこらえていたのに、きっとそんなことなどつゆ知らずの狼くんは。
『……ひなのこと、幼なじみだなんて思ったことない』
『っ!』
飄々とした顔で、心臓のどまんなか。
とどめを刺しにきた。
『本気の本気でそう思ってるんですか……っ?』
答えてくれる気もないみたい。
黙りこんだ狼くんの横顔を一方的に見つめながら、震える声で。
『……知らなかったです。狼くんがそんなに私のこと、嫌いだったなんて』
ここに戻ってくる前に、知っていたら。
知っていたら────
戻ってこなかった?
狼くんの家に泊めてもらわなかった?
狼くんと同じ学校にしなかった?
どうだろう、わかんないや。
もしも、知っていたとしても同じことをしたかもしれない。
だって私は、それくらい、狼くんのこと。