狼くん、ふれるなキケン!



「好きなんじゃないの? あいつのこと」

「え……っ?」




ふいうちもふいうち。
まったく構えていなかった方向からの変化球。


目を白黒とさせていると。




「もう高校生なんだから、男と女のつきあいに変わっててもおかしくないよねーって話」

「なっ、」

「あれ、もしかして図星?」




勢いよく首を横にふる。
図星なんかじゃない、むしろその正反対。



まやくんの言う『男と女のつきあい』って……もっとシンプルに、単純に言い換えると、恋愛関係……ってこと、だよね?



考えたこともなかった、そんなの。
私が狼くんを────?




「そんなのじゃっ」

「あーやしーい」




含み笑い。


その表情、どこかで見たことあるような気がするなと思ったら、そうだ、あれにすっごく似てるんだ。


不思議の国のアリスに登場するチェシャ猫……!




「ほんとにっ、ちがいますからねっ!?」




ちがう、と思う。
狼くんはとくべつ、だけど。


さすがにそういう風には────たぶん、きっと、おそらく、ない。




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