狼くん、ふれるなキケン!



まやくんにそーとー振り回されたとはいえ、転校初日の一限からそうそう遅刻するわけにはいかないもん。

道枝さんにはほんとうに感謝だ。





「そーだ、ひなちゃん」




教室の扉をくぐる直前。

前を歩いていたまやくんがぴたりと足をとめて振り返った。




「……?」

「いつでもおいでよ、おれのとこ」





きょとん、と瞬きを繰り返す、と。





「存分に可愛がってあげるから」

「っ、そんなもんこっちから願い下げです!断固拒否!」





まやくんの横をひょいとすり抜けた私は、先に教室に入って、ぴしゃりと扉を勢いよく閉めた。



閉め出されたまやくんが、扉の向こうでなにか言っているみたいだけど、無視だ無視。



まだ慣れなくて落ち着かない自分の席で頬杖をつきながら、そういえば、“校舎案内” という名目でまやくんと一緒にいたのに、結局何も案内してもらってなかったな……とぼんやり考えたりした。



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