狼くん、ふれるなキケン!
「ふっ……、くく」
急に狼くんママが吹き出したから、それはもうびっくりした。
狼くんと私、見事にそっくりな表情を浮かべていたと思う。
目が点になる、という表現が文字通りに当てはまるような。
「え……っと」
ぜんぜんどういうことかわからなくて、勝手にあたふたとしていると、少しして、狼くんママがようやく。
「パパがね、落とし穴に落ちたって」
「……。え?」
思わず、口をぽかーんと開いたまま固まってしまった。
思考停止した私を見て、狼くんママは堪えきれないといった様子でぶふーっと勢いよく噴き出して笑った。
「お、落とし穴?」
「いやあ、パパってほんとーにいつまで経ってもドジよねえ。近所の子どもたちが遊びでつくった落とし穴に見事に落ちたんだって」
「えええ……?」
そんなミラクル、ある?
聞いたこともないような話に、しばし混乱していたけれど、落ち着いてきたところで徐々に込み上げてくる。
狼くんママの止まらないくすくす笑いにつられて、思わず、ふ、と笑い声が漏れてしまった。
笑ってしまってごめんなさい、狼くんパパ。