狼くん、ふれるなキケン!
何するんだろうってきょとんとする私には目もくれないで、狼くんはキュポッと音を立ててマーカーのキャップを開けた。
そしてキュッキュッと何かを書き込んでいく。
「ええと……、1. 家事は交替でする……?」
「一緒に住む以上、最低限のことは決めとく必要があるだろ」
狼くんが喋った!とまた思う。
いちいち感動してしまうのは、もう許してほしい。普段狼くんが喋ってくれないせいだし。
なるほど、たしかにある程度ルールは共有しておかなくちゃならないかも。明日からふたりで暮らしていくんだもんね。
納得すると同時に、心の奥の方で少しがっかり……というか拍子抜けするような気持ちを味わってしまう。
『部屋行く』ってそういうことかあ、なんて思ってしまった私、いったい何を期待していたんだろう。
それにしても、狼くんの字が思ったよりきれいでびっくりしちゃう。
とめはねはらいがちゃんとしていて、そういうところは私の思う狼くんって感じがするのにな。
「家事は日ごとに交替でいいよな」
「あ、うん……!」