狼くん、ふれるなキケン!
「子供じゃねーんだよ、ひなも俺も」
「はい」
わかってるよ、そんなこと。
だって、10年も経ってるんだもん。
素直に頷くと、狼くんがさらに眉間のシワを深めた。
なんでそんな顔するの。
「もう、ただの男と女なんだよ」
「……へ?」
「幼なじみとかどうでもいい」
「っ!」
「俺が男だって、ちゃんとわかってんの?」
責めるみたい、なじるみたいな口調。
まるで私がなにか悪いことをしたみたい。
「わかってますっ、それくらい!」
あたりまえだよ。
狼くんのことを女の子だと思ったことなんて、さすがに、生まれてこの方一度もないもん。
なんて、自信満々に答えたのに、狼くんはぜんぜん納得していない。「そういうことじゃない」って細まったツリ目がそう言っている。
「……男と同じ家でふたりで生活するって、どういうことかちょっとくらいは考えろよ」
「……え」
がつんと頭を殴られたみたいな衝撃。