狼くん、ふれるなキケン!



「子供じゃねーんだよ、ひなも俺も」

「はい」




わかってるよ、そんなこと。
だって、10年も経ってるんだもん。



素直に頷くと、狼くんがさらに眉間のシワを深めた。

なんでそんな顔するの。




「もう、ただの男と女なんだよ」

「……へ?」

「幼なじみとかどうでもいい」

「っ!」

「俺が男だって、ちゃんとわかってんの?」




責めるみたい、なじるみたいな口調。
まるで私がなにか悪いことをしたみたい。




「わかってますっ、それくらい!」




あたりまえだよ。

狼くんのことを女の子だと思ったことなんて、さすがに、生まれてこの方一度もないもん。



なんて、自信満々に答えたのに、狼くんはぜんぜん納得していない。「そういうことじゃない」って細まったツリ目がそう言っている。




「……男と同じ家でふたりで生活するって、どういうことかちょっとくらいは考えろよ」

「……え」





がつんと頭を殴られたみたいな衝撃。





< 70 / 352 >

この作品をシェア

pagetop