狼くん、ふれるなキケン!
む、と口をとがらせると。
「……もっと警戒しろよ」
「え?────ひゃっ、」
狼くんが何か呟いた言葉は上手く聞き取れなくて。
少し身を乗り出した、けれど、なぜか狼くんが不自然にこちらに顔を近づけたから。
頭をよぎったのは、狼くんの家に来た日に奪われたキス。
またキスされるの……っ?
思わず身をよじって、それから口元を両手で覆った、けれど。
「……っ!」
かぷ、と甘噛み。
されたのは、唇じゃなくて。
「な、な、な」
思わず口をぱくぱくさせる。
冷めた目でこっちを見ている狼くん。
気持ちを落ち着けるためにも、手のひらでぐーをつくって、ぽかっと一度、狼くんの胸をなぐる。
「今っ、鼻噛みましたね……っ!?」
痛くはなかった、けど。
鼻のてっぺんにたしかに、とがった歯の感触がした。
もう手遅れだけど、鼻を手のひらで隠しながら、狼くんを睨む。